懸垂グリップの種類と違い:順手・逆手・ニュートラル、手幅、親指の位置(2026)
懸垂グリップとは、バーの握り方のことです。この記事では、手のひらが向く方向、両手の間の幅、親指の位置の3つに分けて見ていきます。それぞれについて、種目解説が何を書いているか、研究がどこまで比べているかを順にまとめ、最後に手が先に離れてしまうときに確かめることを整理しました。
逆手(チンアップ)が順手(プルアップ)と何が違うかは逆手懸垂と順手の違いの記事に、1回をどこまでで数えるかは懸垂フォームの記事に別にまとめました。ここでは、手がバーにどう触れるかだけを扱います。
懸垂グリップを作る3つの要素:向き・手幅・親指
ACE(American Council on Exercise)のプルアップとチンアップの種目解説は、スタートの姿勢で手について3つのことを書いています。手のひらが向く方向(プルアップは外向き、チンアップは自分向き)、親指までハンドルに巻きつけて握ること、手首を前腕と一直線に保つことです。手幅については、NASM(National Academy of Sports Medicine、全米スポーツ医学アカデミー)のトレーナー向けガイドが、ふつうの範囲を書いています。
3つはそれぞれ別々に変えられます。同じ順手でも狭くも広くも握れますし、親指はどちらの向きで握っても、巻きつけることもバーの上に乗せることもできます。下で紹介する手幅と親指の研究も、手幅だけ、あるいは親指の位置だけを変えて比べています。
グリップによって回数が変わることもあります。NASM は、たいていの人にとってチンアップのほうが楽に感じられる傾向があると書いています。そのため、前回の回数と比べたいなら、3つをすべて同じにして数えます。
懸垂グリップの種類:手のひらの向きで分かれる順手・逆手・ニュートラル
順手(オーバーハンドグリップ)は手のひらを外に向けて握る方法で、この握り方でする懸垂をプルアップと呼びます。逆手(アンダーハンドグリップ)は手のひらを自分に向けて握る方法で、この懸垂がチンアップです。
ニュートラルグリップは、両手のひらが向かい合うように握る方法です。ACE は、ダンベルを太ももの横に持つ種目で「親指でハンドルを包み、手のひらを体のほうに向けて」握るように書き、これを closed, neutral grip と呼んでいます。太ももの横で手のひらが体のほうを向けば、両手のひらは互いに向かい合います。
まっすぐなバーに両手を肩幅で並べて掛けると、手のひらは前か後ろを向くしかありません。棒を握り込むと、手のひらは棒と直角の方向を向くからです。そのため、まっすぐなバーに両手を並べて掛けるやり方では、ニュートラルグリップはできません。自宅に置く器具を選ぶ段階なら、バーと直角に付いた平行なハンドルがあるかどうかも見ておきます。器具どうしの比較はチンニングスタンドとドア枠の懸垂バーを比べた記事にまとめました。
3つの向きを1つの研究で比べたものに、Dickie ら(2017年)があります。筋力トレーニングをしている男性19人が逆手・順手・ニュートラルグリップとロープでの懸垂を行い、肩・腕・前腕の8つの筋肉の筋電図を測りました。抄録の結論は、手の向きが違っても1回全体の筋活動は似ていたというもので、グリップの間の差として書かれているのは、順手がニュートラルグリップより僧帽筋中部の信号が高かったという1点だけです。チンアップとプルアップを比べた別の研究(Youdas ら、2010年)は違う結果になりましたが、その内容は逆手懸垂の記事に表でまとめてあります。
筋電図は、1回動作したときに出た筋肉の信号を測ったものです。1つのグリップでトレーニングを続けたあと体がどう変わったかを比べた研究ではないので、この結果から、どのグリップが体をどう変えるとは言えません。
懸垂の手幅:肩幅の近くで決めます
NASM のガイドは、プルアップの手幅はふつう肩幅より少し広く、チンアップはふつう肩幅か、それより少し狭く握ると書いています。
手を肩幅より広く開くほど腕が斜めになるので、腕を伸ばしきってぶら下がった位置で、肩がバーに近づきます。上で届かなければならない基準が同じなら、体が動く距離はそのぶん短くなります。
下の2つの研究は、手幅を肩幅(左右の肩の先端の間の距離)を基準に決めています。懸垂で手幅だけを変えてみた研究に、Ortega-Rodríguez ら(2021年)があります。トレーニングを積んだ男性14人が順手で懸垂を行い、一度は肩幅で、もう一度はそれぞれが自由に選んだ幅で行いました。自由に選んだ幅は平均で20.04%広かったのですが、重りを付けて測った最大筋力も、疲れきるまでの回数も、力・速度・パワーの関係も、2つの条件で似ていました。
手幅による筋肉の信号については、懸垂ではなくラットプルダウン(座って頭上のバーを引き下ろす種目)で測った研究があります。Andersen ら(2014年)は「広く握るほうが狭く握るより広背筋を使うという考えは一般的だが、幅広い科学的な裏づけはない」という一文から研究を始め、男性15人に順手で肩幅の1倍・1.5倍・2倍を握ってラットプルダウンをしてもらいました。動作全体で見ると、広背筋・僧帽筋・棘下筋の筋電図は3つの幅で似ていて、重りを下ろしていく局面だけを取り出すと、2倍の幅が1倍より広背筋・棘下筋の信号が高くなりました。6回挙げられる最大の重さは、2倍の幅(77.3kg)が1倍(80.3kg)・1.5倍(80.0kg)より低くなりました。
まとめると、懸垂の研究では20%あまり広げても回数は似ていて、ラットプルダウンの研究では広く握っても動作全体の筋活動は似ていました。この記事で確かめた研究のなかに、広く握るほど良いという結果はありませんでした。手幅は、腕を伸ばしきるまで下りてまた上がる動作を、毎回同じ幅でできる位置で決めます。バーの継ぎ目や模様のような目印を1つ決めて、毎回その位置に手を置きます。
懸垂の握り方と親指:巻きつけるか、バーの上に乗せるか
ACE のプルアップとチンアップの解説は、親指までハンドルに巻きつけて握るように書いています。前に出てきた ACE の closed が、このように親指で包む握り方です。反対に、親指をバーの下に回さず、バーの上に乗せて握るのをオープングリップと呼びます。
2つの握り方で回数を比べた研究が、Di Bartolo ら(2023年)です。懸垂が5回以上できる、日常的に体を動かしている男性95人が、1週間の間隔をあけ、ランダムな順番で2つの握り方を1回ずつ使って、疲れきるまで懸垂をしました。バーの直径は33mmで、手は順手で肩より少し広く握りました。平均回数はオープングリップが14.2回、クローズドグリップが13.9回で、統計的に意味のある差はありませんでした。
著者らは、回数の結果から見れば親指の位置は好みと技術上の目的で選べばよく、握り方が決められたテストに備えるならその握り方で練習するように、と書いています。限界もあわせて書いています。参加者が日常的に体を動かしている男性だけなので、女性や運動をしていない人にはそのまま当てはめられないこと、筋電図は測っていないので、2つの握り方で筋肉の使われ方が違ったかどうかはわからないことです。
ですから親指は、ACE の解説どおり巻きつけて握っても、バーの上に乗せて握っても構いません。どちらかに決めて、毎セット同じように握ります。懸垂フォームの記事にある構えの表でも、親指は同じ基準にしています。
懸垂で手が先に離れるときに確かめること
足が床から離れている間は、バンドや足台の補助がなければ、体重のすべてを両手が支えています。体を支えているのが手だけだからです。そのため手が持ちこたえられなければ、背中や腕に力が残っていても、そのセットはそこで終わります。そんなときに見るのは3つです。
親指の位置を変えてみます。 上の研究では、2つの握り方の平均回数は似ていました。ただ、平均が似ているからといって、1人の人にとって2つの握り方が同じだという意味ではありません。自分の手にどちらが合うかは、実際に変えてやってみて決めます。
バーの太さを見ます。 懸垂の研究ではありませんが、Ratamess ら(2007年)は、筋力トレーニングの経験がある男性11人の1回最大挙上重量(1RM)を、標準的なオリンピックバーと、太さ2インチ(5.08cm)・3インチ(7.62cm)のバーで測りました。デッドリフトは太いバーで約28.3%・55.0%、ベントオーバーロウは約8.9%・37.3%下がり、ベンチプレスとショルダープレスには差がありませんでした。下がった幅は手の大きさ・最大握力と相関があり、著者らは、引く種目のほうが最大握力に頼る度合いが大きいためだろうと見ています。この結果から、バーの太さが懸垂の回数をどれだけ変えるかは言えません。ただ、手が先に離れてしまうのに、バーが特に太かったり、何かを巻きつけて太くなっていたりするなら、確かめてみる場所です。
ぶら下がりを別に行います。 NASM は、最初の1回に向けて準備する段階の1つに、スキャプラプルアップ(肩甲骨を引く動き)とぶら下がりを挙げ、動作が求める姿勢とグリップを養うためだと書いています。ぶら下がりから最初の1回までの順番は、懸垂ができない人向けの記事に表でまとめました。
手や手首が痛むなら、その日はそこでやめます。
懸垂グリップを変えても、アプリの数え方は同じです
PULL UP KING にはグリップを選ぶ設定がなく、判定のコードにも手のひらの向きや親指の位置を読む部分がありません。手首は画面上の点1つとして捉えられます。セットを始めるたびに、そのセットの手首・肘の位置から判定線(バーより少し下、肘の高さの点線)を引き直し、顎がこの線の上に上がって、線の下へ一定の距離だけ戻ってくると1回と数えます。反動を使ったかどうか、下で腕を伸ばしきったかどうかは判定しません。ですから、手幅や向きを変えても、アプリ側で変えるものはありません。線がどう引かれるかは、逆手懸垂の記事に詳しく書きました。
スマホはスタンドに縦向きに立て、バーから2〜3歩離して、顔・肩・肘・手首がすべて画面に入るようにします。広く握るほど両手首が画面の左右へ開いていくので、広いグリップなら、まず手首まで画面に入っているかを確かめます。
アプリには休みの日のぶら下がりもあります。昨日セッションを終えていれば、今日のホームに休みの日カードが出て、そこからぶら下がりを始めます。目標はレベル1〜12が20秒、13〜24が30秒、25〜44が40秒、45からが45秒で、3セットです。カメラは目標を過ぎてもセットを打ち切らず、手を離すまでぶら下がった時間を測ります。この記録は、レベル・セッション数・連続記録には入りません。
よくある質問
懸垂のグリップは広く握るほど良いですか?
この記事で確かめた研究のなかに、そういう結果はありませんでした。順手の懸垂で肩幅と、平均20%あまり広く選んだ幅を比べた研究(Ortega-Rodríguez ら、2021年)では回数と最大筋力が似ていて、肩幅の2倍まで広げたラットプルダウンの研究(Andersen ら、2014年)では動作全体の筋活動が似ていました。NASM が書くふつうのプルアップの手幅は、肩幅より少し広い程度です。
懸垂の握り方で、親指は必ず巻きつけるべきですか?
ACE の種目解説は、親指まで巻きつけて握るように書いています。ただ、男性95人を対象にした研究(Di Bartolo ら、2023年)では、親指を巻きつけたクローズドグリップ(平均13.9回)とバーの上に乗せたオープングリップ(平均14.2回)の回数に、意味のある差はありませんでした。どちらかに決めて同じように握り、ぶら下がったときに手が先に離れそうな感じがするなら、もう一方に変えてみます。
順手と逆手をセットごとに変えてもいいですか?
PULL UP KING は判定線をセットごとに引き直すので、グリップを変えても同じルールで数えます。ただ、グリップによって回数が変わることがあるので、混ぜて数えた回数では前回より増えたかどうかを見分けにくくなります。回数を比べたいなら、1つのグリップに決めておきます。どちらから始めるかの基準は逆手懸垂と順手の違いの記事に書きました。
休みの日は、ぶら下がりを3セット
昨日セッションを終えていれば、ホームに休みの日カードが出ます。レベルに応じて20〜45秒を3セット。カメラが、手を離すまでぶら下がった時間を測ります。