PULL UP KING

逆手懸垂(チンアップ)と順手の違い:手のひらの向きで変わること、フォーム、最初に選ぶ基準(2026)

2026.9.30

逆手懸垂は、手のひらを自分のほうに向けてバーを握り、体を引き上げる懸垂です。チンアップとも呼ばれ、手のひらが外を向く順手懸垂(プルアップ)とバーも動作の順序もほとんど同じですが、逆手懸垂では手のひらの向きと一緒に肘が通る位置が変わり、手幅もふつうは違えて握ります。この記事では、チンアップとプルアップの違いが何を変えるのか、研究はどこまで言っているのか、最初はどちらから始めるか、そしてカメラで回数を数えるアプリがグリップに関係なく何を見て数えているのかをまとめます。

1回を厳密に何で数えるか、反動やハーフレップの話は懸垂フォームの記事に別にまとめました。ここでは、グリップが変わったときに変わることだけを扱います。

逆手懸垂と順手懸垂の違い:手のひら・手幅・肘の位置

逆手懸垂は手のひらが自分を向く逆手、順手懸垂は手のひらが外を向く順手で握ります。NASM(National Academy of Sports Medicine、全米スポーツ医学アカデミー)のトレーナー向けガイドは、手幅も合わせて書いています。逆手懸垂はふつう肩幅か、それより少し狭く、順手懸垂はふつう肩幅より少し広く握ります。

肘が通る位置も違います。ACE(American Council on Exercise)の種目解説は、どちらの動作でも肘を床のほうへまっすぐ引き下ろすように書いていますが、逆手懸垂では肘を体の前に置き、順手懸垂では胴体の側面のライン、時計の3時と9時の位置に置くように、としています。

同じ ACE の解説で、スタートの姿勢・引き上げ・下ろし方の指示は、手のひらの向きと肘の位置を除けば2つの動作で同じです。親指までバーに巻きつけて握り、手首を前腕と一直線にし、肩を後ろ・下へ引いたまま、体を揺らさずに上がります。手幅は ACE ではなく、NASM が書いている違いです。

逆手と順手で使う筋肉の違い:2本の研究で結論が分かれます

グリップによって使う筋肉が変わるのかについては、筋電図の研究があります。皮膚に貼った電極で筋肉の電気信号を測り、最大の力を出したまま耐えたとき(最大等尺性収縮)に出る信号の何%にあたるかで表す方法です。下の2本の研究は、結論が同じではありません。

研究 参加者 比べたもの 抄録に書かれた結果
Youdas ら、2010年 男性21人、女性4人 順手懸垂、逆手懸垂、回転するハンドルでの懸垂 逆手懸垂で大胸筋・上腕二頭筋が順手懸垂より高く、順手懸垂で僧帽筋下部が高い
Dickie ら、2017年 筋力トレーニングをしている男性19人 逆手・順手・ニュートラルグリップ、ロープでの懸垂 手の向きが違っても、1回全体の筋活動は似ていた

Youdas の研究では、広背筋が3種目で117〜130%と、測った筋肉のなかで最も高い範囲でした。抄録でグリップによって統計的に差が出たと書かれているのは、大胸筋・上腕二頭筋(逆手懸垂のほうが高い)と僧帽筋下部(順手懸垂のほうが高い)です。同じ研究で肘関節が動いた範囲は、平均で逆手懸垂が100.6度、順手懸垂が93.4度でした。

Dickie の研究の抄録でグリップ間の差として書かれているのは、順手がニュートラルグリップより僧帽筋中部の活動が高かったという1点だけです。逆手(チンアップ)と順手(プルアップ)の間の差は、抄録には報告されていません。

どちらの研究も1回の測定で筋電図を測ったもので、一方のグリップでトレーニングを続けたあとに何が変わったかを比べた研究ではありません。そのため、この結果から「逆手懸垂をすれば、この筋肉がより発達する」とは言えません。言えるのは、ある研究では逆手懸垂のときに上腕二頭筋・大胸筋の信号が高く出て、別の研究ではグリップの間で似た値だった、というところまでです。

最初は逆手懸垂と順手懸垂、どちらから始めるか

NASM のガイドは、逆手懸垂はたいていの人にとって楽に感じられる傾向があり、順手懸垂はたいていの人にとって2つのうち難しいほうだと書いています。同じ記事で「難しいほうが良いわけではない」とし、どちらを選ぶかは、良いフォームでこなせるかどうかと、強調したい筋肉で決めるように、としています。ただし、NASM が逆手懸垂のほうが楽な理由に挙げた上腕二頭筋の助けは、上の2本の研究のうち Youdas とは合い、Dickie とは合いません。自分にとってどちらが楽かは、実際にやってみた回数がいちばん直接的な答えです。

そこで、選ぶ順番はこうします。

  1. 自重で1回もできないなら、グリップより順番が先です。ぶら下がりからバンド補助まで進む順番は懸垂ができない人向けの記事に、バンドの太さの選び方は懸垂バンドの記事にまとめました。
  2. 何回かでもできるなら、2つのグリップでそれぞれやってみて、良いフォームで多くできたほうから始めます。
  3. 1つに決めたら、しばらくはそのグリップで数えます。グリップを混ぜて数えた回数では、前回より増えたかどうかを比べにくくなります。

アプリで回数を数えるなら、この選択が処方につながります。PULL UP KING のレベルテストは、1セットでもう上がらなくなるまでやった回数を受け取り、どのグリップでやったかは受け取りません。自重で1回以上なら、スタートレベルは1セット目の処方がその回数の75%に近いレベルに決まり、0回ならバンド区間のレベル1から始めます。1セット目を75%にするのは、最初のセットで力を使い切らないほうが、残り4セットまで満たせるからです。

処方は、グリップを知らない回数で決まります。逆手懸垂で測った回数でレベルを受け取り、順手懸垂でセッションをすれば、処方は逆手懸垂の回数に合わせて決まります。2つのグリップで回数が違う人は、テストしたグリップでセッションもしてはじめて、最初の処方から実際の回数と合います。処方を満たせなければ、あとから調整はされます。同じレベルで2回満たせなければそのレベルをもう一度行い、レベルを2回続けてクリアできなければ1つ下がります。このルールは懸垂回数を増やす記事にまとめました。

逆手懸垂のフォーム:順手懸垂と変わるところだけ

NASM は同じ基本が2つの動作にそのまま通じると書き、ACE の2つの解説も、動作の指示(スタートの姿勢・引き上げ・下ろし方)は手と肘以外は同じです。そこで、ここでは逆手懸垂で変わるところだけを書きます。

手:手のひらは自分に向ける

手のひらを自分のほうに向けて握ります。手の間隔は、NASM のガイドどおりなら、ふつう肩幅か、それより少し狭くなります。

肘:体の前に置いたまま、床のほうへ

引くときは、肘を体の前に置いたまま、床のほうへまっすぐ引き下ろします。肘を胴体の側面のライン、時計の3時と9時の位置へ持っていくのは、ACE が順手懸垂に書いている位置です。体が揺れる反動の抑え方は懸垂フォームの記事にまとめました。

アプリのカメラはグリップではなく、顎と判定線を見ます

PULL UP KING には逆手懸垂と順手懸垂を選ぶ設定がなく、判定のコードにも手のひらの向きを読む部分がありません。アプリが見ているのは顔(鼻・耳)・肩・肘・手首の位置なので、アプリはこれらがすべて画面に入るように置くよう案内しています。手首は点1つとして捉えられるため、その点だけでは手のひらがどちらを向いているかはわかりません。

手首は線を引くのに使われます。セットを始めるとき、バーを握った両手首の平均の位置が画面上のバーになり、肘から手首のほうへ4分の1の地点を結んだ線が判定線になります。アプリの案内文では「バーより少し下、肘の高さに引く点線」です。顎は鼻から下へ一定の距離だけ下がった点として推定し、耳が見えていれば、鼻と耳の距離の0.6倍だけ下がります。

1回は、顎が判定線の上に上がり、線の下へ一定の距離だけ戻ってくる1往復です。上と下のどちらも連続2フレームで確かめ、頂点に届かないまま下りたものは数えません。逆手でも順手でも、バンドを掛けていてもいなくても、このルールは同じです。反対に、反動を使ったかどうか、下で腕を伸ばしきったかどうかは判定しません。判定線がバーより下にあるので、顎がバーに少し届かなかった回でも、線を越えれば1回になります。

線をバーより下に置いたのは意図的です。カメラの角度と関節の認識には誤差があり、バーぴったりで判定すると正しくできた回まで捨ててしまう、というのがアプリの説明です。判定線はセットを始めるたびに、そのセットの手首・肘の位置で引き直されるので、セットごとにグリップを変えても、アプリ側で変えるものはありません。スマホはスタンドに縦向きに立て、バーから2〜3歩離して、顔から手首までが1つの画面に入るようにします。

よくある質問

逆手懸垂も懸垂の回数に数えていいですか?

どの基準で数えるかによります。アメリカ海軍兵学校の入学体力評価のように順手と決められている基準では、逆手懸垂の回数は含まれません。PULL UP KING はグリップを区別せず、顎が判定線を越えた回を同じように数えます。自分で記録するときは、1つのグリップに決めておいてはじめて、前回の回数と比べられます。

逆手懸垂と順手懸垂、どっちがきついですか?

NASM は、たいていの人にとって逆手懸垂のほうが楽に感じられる傾向があると書いています。ただ、筋電図の研究は、グリップによって筋肉の信号が違ったという結果(Youdas ら)と、似ていたという結果(Dickie ら)に分かれます。自分にとってどちらが楽かは、2つのグリップでそれぞれやってみた回数で確かめるのがいちばん直接的です。

逆手懸垂をすると肘や手首が痛みます

原因をこの記事で見分けることはできません。痛むなら、その日はそこでやめます。NASM も、肩や肘の痛みやしびれが続くなら、我慢してトレーニングを続けず、医師や理学療法士に診てもらうように書いています。

逆手でも順手でも、同じ線で数えます

グリップを選ぶ設定はありません。カメラは顎が判定線(バーより少し下、肘の高さ)を越えた回を数え、レベルテストの回数でスタートレベルを決めます。