PULL UP KING

懸垂平均回数は何回?ひとつの数字で答えにくい理由と、アメリカ海兵隊の体力テスト・士官学校の基準で見る「何回できたらすごいか」(2026)

2026.10.16

「懸垂平均回数は何回か」は、ひとつの数字では答えにくい問いです。誰を集めてどんなルールで数えたかによって数字が変わりますし、この記事を書くために調べた資料のなかに、一般の大人全体を代表する懸垂の平均回数は見つかりませんでした。

そこでこの記事では、出どころのはっきりした2種類の資料で代わりに見当をつけます。ひとつはノルウェーの徴兵検査で3万人あまりが測った懸垂の記録、もうひとつはアメリカ海兵隊の体力テストと、アメリカの士官学校の入学体力評価の公式採点表です。最後に、PULL UP KING が今の回数からどこでスタートさせるのかをまとめました。どこまでを1回と数えるか、反動やハーフレップの話は懸垂フォームの記事に別にまとめています。

懸垂平均回数をひとつの数字で言いにくい理由

1つ目は、誰を集めたかです。親指の位置による懸垂の回数を比べた研究(Di Bartolo ら、2023年)では、ふだんから体を動かしている男性95人の平均が、オープングリップで14.2回、クローズドグリップで13.9回でした。ところがこの研究は、もともと懸垂を5回以上できる健康な男性しか受け入れていません。1回もできない人は最初から入れなかったので、この14回前後を「男性の平均」と読むことはできません。

2つ目は、どう数えたかです。このあと見る3つの資料も、グリップや制限時間といったルールがそれぞれ違います。ノルウェーの研究の著者は、この研究の懸垂のやり方は徴兵検査用に作ったものなので、ほかの基準データとは比べにくいかもしれないと書いています。

3つ目に、平均が公開されていない場合があります。アメリカ海軍兵学校とウェストポイント(陸軍士官学校)の入学体力評価の案内ページには、懸垂の満点は書かれていますが、平均は書かれていません。

懸垂平均回数に近いデータ:ノルウェーの徴兵検査3万人

ノルウェーは男女とも徴兵制で、2段階で選びます。17歳になると全員が健康や体力などを尋ねるインターネットのアンケートに答え(1段階目)、その回答をもとに毎年およそ3分の1が徴兵検査所へ1日出向いて、健康診断と体力測定を受けます(2段階目)。ノルウェー国防大学の Aandstad(2021年)は、この2段階目の記録から17〜21歳の基準値を発表しました。懸垂は2017年秋から2019年春までに、男性18,847人、女性11,927人が測っています。

測り方はこうです。順手(オーバーグリップ)で腕と脚を伸ばしてぶら下がり、顎が梁(はり)の上に出てから、腕が伸びきるまで下りたら1回です。脚で蹴ったり体を揺らしたりした回は認められませんでした。こうしてぶら下がって引く垂直懸垂が1回もできなければ、水平懸垂に切り替えて測りました。かかとをベンチに乗せて体を水平にし、体をまっすぐに保ったまま、胸が梁の下面に触れるまで引くやり方です。

懸垂の記録は一方に偏っていたため、論文は平均ではなく中央値とパーセンタイルで示しています。パーセンタイルは、記録を低いほうから並べたときの位置です。男性の50パーセンタイル(中央値)が7回というのは、およそ半数が7回以下だったという意味で、90パーセンタイルが13回というのは、10人中9人ほどが13回以下だったという意味です。

パーセンタイル 男性 女性
10パーセンタイル 水平 9回 水平 0回
30パーセンタイル 3回 水平 3回
50パーセンタイル(中央値) 7回 水平 5回
70パーセンタイル 10回 水平 9回
90パーセンタイル 13回 2回
95パーセンタイル 15回 4回

「水平」とついていない欄は、垂直懸垂の回数です。水平懸垂は垂直懸垂が1回もできなかったときに受ける測定なので、男性でも10パーセンタイルが水平懸垂だったということは、10人に1人以上が垂直懸垂を1回もできなかったということです。女性は80パーセンタイル(水平12回)まで水平懸垂だったので、10人中8人以上が垂直懸垂0回で、90パーセンタイルが2回、95パーセンタイルが4回でした。

この数字も、そのまま「大人の平均」として使うのは難しいところです。1段階目のアンケートで筋力や持久力が同年代より低いと答えた人は2段階目に進みにくく、そのため著者は、この資料は一般の人全体を代表するサンプルより、いくらか高いほうに偏っていると書いています。年齢も17〜21歳だけです。

懸垂は何回できたらすごい?アメリカ海兵隊の体力テストの採点表

平均の代わりに、公式の採点表で見当をつけることもできます。アメリカ海兵隊の体力テスト(PFT)は、現役の海兵隊員全員が毎年1月から6月のあいだに受けるテストで、3種目あります。上半身の種目では、懸垂と腕立て伏せのどちらかを選びます。基準は海兵隊命令 MCO 6100.13A に定められていて、下の表は2022年の改訂と2025年5月の行政上の改訂が反映された版の、懸垂の採点表です。

年齢 男性 最低(40点) 男性 満点(100点) 女性 最低(60点) 女性 満点(100点)
17〜20歳 4回 20回 1回 7回
21〜25歳 5回 23回 3回 11回
26〜30歳 5回 23回 4回 12回
31〜35歳 5回 23回 3回 11回
36〜40歳 5回 21回 3回 10回
41〜45歳 5回 20回 2回 8回
46〜50歳 4回 19回 2回 6回
51歳以上 3回 18回 2回 4回

男性は年齢によって3〜5回から点がつき始め、満点は18〜23回です。女性は1〜4回から点がつき始め、満点は4〜12回です。表を読むときに知っておきたいことが3つあります。

海兵隊では、バーは手のひらが前を向いても自分を向いても握れます。1回は、腕を伸ばしきったぶら下がりから顎がバーの上に出て、腕が伸びきるまで下りることです。制限時間はなく、バーから落ちるまで続けます。体や脚を振ったり蹴ったりするキッピングは認められず、見つかればその回は数えません。

2025年12月、海兵隊は2026年1月1日から、戦闘兵科の海兵隊員には性別に関係なく、この命令の男性の年齢別採点表で210点(総得点の70%)以上を求めると発表しました。戦闘兵科ではない海兵隊員は、これまでの性別・年齢別の基準をそのまま使います。

士官学校の入学体力評価:満点は男性18回、女性7回

アメリカ海軍兵学校の案内によると、入学体力評価(CFA)は海軍兵学校・空軍士官学校・陸軍士官学校の3校の志願者を評価するために作られた6種目のテストで、結果は各校の入学審査に使われます。

懸垂は、順手(手の甲が自分のほうを向く握り)で腕を伸ばしきり、静止してぶら下がった状態から始めます。脚を振ったり蹴ったり、自転車をこぐように動かしたりしてはいけません。顎のラインがバーの上に出て、地面と平行になる必要があります。顎がバーの上に出ると採点者が「ダウン」、腕が伸びきると「アップ」と号令をかけ、その号令に合わせて1回ずつ行います。2分たったら終わりで、満点が男性18回、女性7回なので、この回数に届けば2分前でもそこでやめます。

女性は、懸垂が1回もできないときに限って、腕を曲げたままぶら下がる種目(flexed-arm hang)で代わりにします。案内には、懸垂1回の点数のほうが、腕を曲げたままぶら下がる種目の最高記録の点数より高いと書かれています。

同じ10回でも同じ数字ではない:アプリで数えた回数を比べるとき

3つの資料の10回は、同じことをした10回ではありません。前に見たとおり、海兵隊は手のひらの向きを問わず制限時間もありませんが、士官学校は順手で2分の制限があり、ノルウェーは順手で、バーではなく梁にぶら下がりました。グリップによって回数が変わりうるという話は、逆手懸垂の記事にまとめました。

PULL UP KING で数えた回数も、これらの採点表とそのまま比べることはできません。アプリは、顎がバーではなく判定線、つまりバーより少し下、肘の高さに引く点線を越えた回を1回と数えます。カメラの角度と関節の認識には誤差があり、バーぴったりで判定すると正しくできた回まで捨ててしまうため、わざと線をバーより下に置いています。反動を使ったかどうか、下で腕を伸ばしきったかどうかも判定しません。

そのため、顎がバーに少し届かなかった回や反動を使った回でも、判定線を越えればアプリでは1回になることがあり、海兵隊の体力テストではそうした回は数えません。アプリの回数は毎セット同じルールで測った自分の記録として使い、採点表と比べるときは横から動画を撮って、顎がバーを越えたか、下で腕が伸びきったかを1回ずつ確かめて、別に数えます。横から撮って1回ずつ確かめる話は、懸垂フォームの記事にもあります。

今の回数から始める場所:PULL UP KING のレベルテスト

PULL UP KING は、今の回数ひとつでスタートレベルを決めます。レベルテストは、もうできなくなるまで行う1セットです。バーを握ってもう上がらなくなるまで続け、両手を下ろせば終わりで、回数はトレーニングのときと同じ判定でカメラが数えます。

初めて始めるときに自重で1回以上できれば、1セット目の処方がその回数の75%に最も近いレベルに割り当てられます。1セット目で力を使い切らないほうが残りの4セットまで満たせる、というのがアプリの説明です。たとえばレベルテストで12回なら、1セット目が9回のレベル22(9-7-6-5-5)から始まります。1回なら、自重1回を5セット行うレベル13(1-1-1-1-1)で、まだ1回もできないと答えれば、測定なしで強いバンドのレベル1から始めます。

レベルを追って数字をたどると、1セット目が初めて10回になるのはレベル23(10-7-6-6-5)です。アプリのよくある質問には、レベル43で1セット目が23回になり、これがアメリカ海兵隊の体力テストの懸垂満点(男性21〜35歳)だと書かれています。レベル53で1セット目が30回、最後のレベル83で50回です。レベルが上がるルールと処方は懸垂回数を増やす記事に、1回もできないときに踏む順番は懸垂ができない人向けの記事にまとめました。

よくある質問

成人男性の懸垂の平均回数は何回ですか?

一般の成人男性全体を代表する平均は、この記事で調べた資料にはありませんでした。ノルウェーの徴兵検査の資料では、17〜21歳の男性18,847人の中央値が7回、25〜75パーセンタイルが3〜10回で、著者はこの資料が一般の人よりいくらか高いほうに偏っていると書いています。

女性の懸垂の平均回数は何回ですか?

同じノルウェーの資料で、女性11,927人は80パーセンタイルまでが水平懸垂で測られていました。10人中8人以上が、ぶら下がって引く懸垂を1回もできなかったということで、90パーセンタイルが2回、95パーセンタイルが4回でした。アメリカ海兵隊の体力テストの女性の懸垂満点は年齢によって4〜12回、士官学校の入学体力評価の女性の満点は7回です。

懸垂10回はすごいほうですか?

何と比べるかによります。ノルウェーの徴兵検査の男性の記録では、10回は70パーセンタイルでした。アメリカ海兵隊の体力テストの男性の表では17〜20歳で63点、21〜25歳で57点で、満点は年齢によって18〜23回です。女性なら、海兵隊の表で10回は26〜30歳で90点、21〜25歳と31〜35歳で95点、それ以外の年齢では満点の回数以上です。いずれにしても、その基準のルールどおりに数えた10回である場合の話です。

アプリで数えた回数で、体力テストの点数を見積もってもいいですか?

そのまま当てはめるのは難しいです。アプリはバーより少し下の判定線を越えた回を数え、反動や腕を伸ばしきったかどうかは判定しませんが、海兵隊の体力テストは顎がバーの上に出る必要があり、キッピングを使った回は数えません。比べるなら、横から撮った動画で数え直した回数を使います。

平均より先に、まず今の自分の回数から

レベルテストはもう上がらなくなるまで行う1セットで、回数はカメラが数えます。1セット目の処方が最大回数の75%に最も近いレベルから始まり、まだ1回もできなければ強いバンドのレベル1からです。レベル43で1セット目が、アメリカ海兵隊の体力テストの懸垂満点(男性21〜35歳)にあたる23回になります。